ハムストリングスのストレッチ効果とは?【理学療法士が解説】 | RE:NOW

ハムストリングスのストレッチ効果とは?【理学療法士が解説】

  • 筋トレ

理学療法士・パーソナルトレーナー

鈴木裕子

ハムストリングスと聞いてピンと来る方はお身体に対する意識がとても高いです。

もしかしたら名前だけ聞いたことがあるという方もいるかもしれませんね。ハムストリングスとは腿の裏側についている筋肉の名前です。ここを柔らかくしておくとメリットがたくさんあります。

この記事で、ハムストリングスについて詳しく学び、ストレッチ方法を習得して柔軟性のある身体を手に入れましょう。

ハムストリングスとは?理学療法士がわかりやすく解説

まず初めに、ハムストリングスとは腿の裏側の筋肉の総です。

ハムストリングスを構成する筋肉

細かく見ていくと、内側ハムストリングス外側ハムストリングスに分けることができます。

さらに、内側ハムストリングスは半腱様筋(はんけんようきん)、半膜様筋(はんまくようきん)で構成されています。

また、外側ハムストリングスは大腿二頭筋(だいたいにとうきん)と呼ばれる筋肉で構成されています。

ハムストリングスの作用

ハムストリングスは骨盤から膝下までついている長い筋肉ですので、様々な影響を与えます。

足の向きに対する作用

内側ハムストリングスは坐骨結節と呼ばれるところから膝の関節を通り越して、膝裏のやや内側についています。そのため、内側ハムストリングスが縮まると股関節が伸展(腿が身体に対して後ろに動く方向)したり、膝が曲がったりします。また、脛(すね)の骨に対しては内側に回旋するように働くため、つま先が内側を向きやすくなります。よって、内側ハムストリングスが硬いと内股の原因になるのです。

外側ハムストリングスは坐骨結節から膝の関節を通り越して、膝裏のやや外側についています。股関節を伸展させたり、膝を屈曲させるのは内側ハムストリングスと同じですが、脛の骨に対しては外側に回旋させるように働きます。つまり、つま先は外側を向きやすくなるのです。よって、外側ハムストリングスが硬いとガニ股になりやすくなります。

骨盤に対する作用

また、ハムストリングスは坐骨結節と呼ばれる骨盤の下の方についていることから、骨盤を後ろに倒す作用があります。

例えば、床に両脚を伸ばして座ると背中が丸まりやすくなりますよね。これは、ハムストリングスが硬いことで骨盤を後ろに引っ張ってしまうからです。あぐらや正座になると骨盤が立てやすくなるのは、膝が曲がることによってハムストリングスが緩み、骨盤を後ろに引っ張る力が弱まるため自由に骨盤を動かす事が出来るのです。

立っている姿勢でも同じことが言えます。骨盤が後ろに倒れて背中が丸まり、猫背の姿勢の人はハムストリングスが硬くなっている人が多いです。そして、そういう人は立っている時に重心のバランスを取るために膝も曲がっています。そのため、余計にハムストリングスの柔軟性を低下させているのです。

次にハムストリングスの柔軟性が上がるとどのような効果があるのでしょうか。一つずつ解説していきます。

ハムストリングスのストレッチ効果

ハムストリングスは股関節や膝関節、そして身体の土台となる骨盤の動きに作用する事がお分かりいただけたかと思います。具体的にハムストリングスのストレッチがどのような効果をもたらすのかみていきましょう。主に以下の5つです。

・怪我の予防
・疲労回復効果
・基礎代謝の向上
・腰痛予防
・姿勢改善

怪我の予防

ハムストリングスが硬くなると、前屈が硬くなります

また、股関節の前方向への動きに制限が出たり、つま先の向きが内側や外側を向いてしまったりという歪みにつながります。その状態で運動をすると、ハムストリングス自体を痛めてしまう可能性もありますし、歪んだ状態では他の筋肉や関節にストレスがかかります。よって、柔軟性を高める事が怪我の予防につながります。

疲労回復効果

疲れには2種類あると言われており、1つは末梢性疲労、もう1つは中枢性疲労です。

末梢性疲労:肉体的な疲れ
中枢性疲労:脳や精神的な疲れ

末梢性疲労の場合、血液の中には疲労物質が溜まっています。筋肉の柔軟性が上がると血液の流れが良くなり、疲労物質が血液に乗って排泄され、疲労回復につながります。

中枢性疲労の場合は、ストレスから筋肉の緊張が高くなっている状態です。こういった場合もストレッチのような軽い運動を行うことで血流が改善して筋肉がほぐれ疲労回復につながります。

また、疲れた時や落ち込んだ時は身体が丸くなりがちですよね。反対に姿勢が精神状態を作るとも言われています。

ハムストリングスが硬く、骨盤が後ろに倒れた状態というのは背中を伸ばすことが難しいです。ですが、ハムストリングスの柔軟性が上がり、姿勢が良くなると疲労感が軽減され精神的にも回復しやすくなるのです。

基礎代謝の向上

筋肉の柔軟性が上がると関節が動く可動域が大きくなります。

例えばハムストリングスの場合は膝を曲げたり、股関節を後ろに伸ばす方向に働く筋肉ですので、柔軟性が上がることで股関節は曲げやすくなるのです。さらに、日常生活の動作でいうと、ウォーキングの際に足を大きく前に出しやすくなります。

また、ハムストリングスは骨盤を後ろに倒す方に引っ張る筋肉ですので、ここが緩むと骨盤を立てやすくなり、姿勢が改善します。よって、普段の生活の中で多くの筋肉を働かせやすくなることで基礎代謝の向上が期待できます。

腰痛予防

ハムストリングスは骨盤を後ろに倒す方向に働く筋肉です。ここが硬くなると背中が丸まり、腰周りの筋肉が緊張して腰痛が出やすくなります。

また、背中が丸まった状態というのは椎間板の前方に圧がかかりやすく、椎間板の中にある髄核というものが後方に押し出されます。これがヘルニアです。よって、ハムストリングスの柔軟性を上げて、骨盤をしっかりと起こせるようにすることが腰痛予防につながります。

実際、腰痛を予防していくには体幹の筋肉が働くことが重要になります。研究によると骨盤前傾位(しっかりと起きている状態)の方が体幹筋が収縮がしやすいというデータがあります。従って、筋肉を働かせやすくするためにもハムストリングスの柔軟性を高めることは重要です。

さらに、よく言われる坐骨神経痛もハムストリングスの硬さが原因となっている事があります。坐骨神経は腰椎と呼ばれる腰の骨の部分から出て、腿の裏を通り、ふくらはぎや脛の前に向かって走っています。その神経がどこかで圧迫されてしまうことで、坐骨神経痛が出てしまうのです。お尻のあたりから痛みや痺れがある方はお尻の筋肉が原因になっている可能性があります。ですが、腿の裏から痛みや痺れ、重だるさなどがある場合はハムストリングスが坐骨神経を圧迫してしまっている可能性があります。よって、坐骨神経痛の改善や予防にもハムストリングスのストレッチは有効です。

姿勢の改善

腰痛予防のところとつながりますが、ハムストリングスの柔軟性が上がると骨盤が後ろに倒れていたところから起きやすくなります。

骨盤がしっかりと起きた状態が作れると、その上に乗っている背骨も正しく整列するので姿勢が良くなります。積み木で考えると分かりやすいですが、一番下の土台が傾いていると、その上に乗る積み木も崩れないようにバランスをとるために前後左右に歪みますよね。人間の身体も同じで、土台となる骨盤が傾いていると、その上に乗る背骨が歪みます。その結果、悪い姿勢になってしまうのです。

骨盤を正しい位置に戻すためにもハムストリングスをしっかりとストレッチして行きましょう。

それでは、ハムストリングスのストレッチ方法をご紹介します。

ハムストリングスのおすすめのストレッチメニュー

これから5つの動画と共にハムストリングスのストレッチ方法をご紹介します。ご自分に合った方法でぜひ続けてみてくださいね。

一般的なストレッチ方法

まずは一般的なハムストリングスのストレッチです。

このストレッチは皆さん一度はやられた事があると思います。ですが、「つま先まで手が届かない」「痛くて嫌」という方もいるのではないでしょうか。床に座って簡単に出来るストレッチですので、つま先まで手が届かなくても腿の裏が伸びている感じがあればOKなので、無理のない範囲で続けてみましょう。

仰向けで脚を上げる方法も、硬い方はつま先を持つのが辛いですよね。そんな時は、タオルをつま先に引っ掛けてタオルを引っ張るようにして行うと楽に伸ばす事ができますので、ぜひやってみてください。

立って行うストレッチ(硬い人におすすめ)

こちらは立って行うストレッチです。

床に座ってストレッチするのが辛い方は立ってやる方法がおすすめです。こ

ちらの動画では椅子に脚を乗せていますが、それも大変でしたらもう少し低い台でも大丈夫。さらには台に脚を乗せなくてもストレッチができます。台に脚を乗せずに行う場合は、片足を前に出した状態で後ろの膝を曲げて、伸ばしている前足に体重をかけます。つま先を天井に向けると、ふくらはぎの筋肉も伸ばされるため、さらに効果的にストレッチする事ができます。この方法でしたら、場所を選ばず仕事中や通勤中などでもさりげなく出来るので、こまめにストレッチするのにおすすめの方法です。

ハムストリングスを満遍なくストレッチする方法

次は、ハムストリングスの中でもお尻に近い方と、膝に近い方を分けてストレッチする方法をご紹介します。

ハムストリングスはお尻のあたりから膝裏までついている長い筋肉ですので、満遍なく伸ばす事が大切です。近位(きんい)というのがお尻に近い方で、遠位(えんい)というのが膝に近い方です。膝を曲げた状態から伸ばすようにストレッチすることで膝裏(遠位)を重点的に伸ばす事ができます。また、膝を伸ばして骨盤をしっかりと前に倒すことを意識することで、お尻の近く(近位)のハムストリングスを重点的に伸ばす事ができます。

このように、近位と遠位と分けて伸ばすことで全体的にストレッチできますし、身体が硬い方でも取り入れやすいストレッチです。

筋肉の性質を使ったストレッチ①

こちらはエクササイズ要素を取り入れたストレッチです。

筋肉には「相反性抑制(そうはんせいよくせい)」という性質があり、これはその性質を使ったストレッチ法です。相反性抑制というのは力を入れている筋肉の反対側の筋肉は弛緩するという性質の事を言います。ハムストリングスの場合、反対側の筋肉というのは腿の前についている大腿四頭筋です。大腿四頭筋は膝を伸ばす筋肉ですので、ハムストリングスの柔軟性を上げるためには、膝を伸ばすエクササイズを行うのが効果的です。

筋肉の性質を使ったストレッチ②

こちらのストレッチはホールドリラックスと呼ばれる手技を応用した方法で、筋肉は最大に収縮した後には弛緩するという性質を使ったものです。

繰り返しになりますが、ハムストリングスは膝を曲げたり、股関節を伸ばしたりする筋肉です。動画で紹介されているように、かかとで床を押すというのはハムストリングスに力を入れているという状態です。力を入れた後に一気に力を抜くとハムストリングスは緩み、柔軟性が上がっていますので、ぜひお試しください。

まとめ

今回はハムストリングスのストレッチについてご紹介させて頂きました。

ハムストリングスという筋肉を解剖学や運動学の観点から理解することで、ストレッチをするときの意識の向け方が変わりますよね。柔軟性が上がると様々なメリットをもたらしてくれるハムストリングス。今回ご紹介させていただいたように、ストレッチと言っても痛みを我慢してギュウギュウ伸ばすストレッチではなく、筋肉の性質をうまく使いながらストレッチしていくのがおすすめです。

全てのストレッチに共通して言えることですが、筋肉は痛みを感じると防衛反応で硬くなるという性質もあります。よって、痛みを我慢して行うストレッチは卒業して、呼吸が出来る強さで上手にストレッチしていきましょう。

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本記事の執筆者

理学療法士・パーソナルトレーナー

鈴木裕子

理学療法士・パーソナルトレーナー・2児のママ。つくば市の自宅サロンREPAIRでリハビリからボディメイク、産後ケアなどお客様にあったメニューで健康的な身体作りをサポートしています♪

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